「労働時間等見直しガイドライン」、「育児・介護休業指針」が改正されています
2017年10月11日 水曜日
10月に入って気温もさらに下がり、ずいぶん秋らしくなってきました。
例年にもれず京都市内に一気に観光客が増え、秋の行楽シーズンの到来を感じさせられます。
さて、10月1日からは「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」および「育児・介護休業指針」が改正、適用されていますので、御紹介させていただきます。
ポイントについては以下をご覧下さい。
【労働時間見直しガイドラインの改正点】
①子どもの学校休業日や地域のイベント等に合わせて、労働者が年次有給休暇を取得できるよう配慮すること
②公民権(選挙権等)の行使又は公の職務(裁判員等)の執行をする労働者のための休暇制度等を設けることについて検討すること
③年次有給休暇について、仕事と生活の調和や、労働者が転職により不利にならないようにする観点から、雇入れ後初めて年次有給休暇を付与するまでの継続勤務期間や最大付与日数に達するまでの継続勤務期間を短縮すること等について検討すること
(労働基準法では、年次有給休暇は入社6か月後に付与され、その日から起算して6年後に最大付与日数となります。)
【育児・介護休業指針の改正点】
子の看護休暇及び介護休暇について、労使協定の締結をする場合であっても、入社6か月未満の労働者が一定の日数を取得できるようにすることが望ましいものであることに配慮すること
(育児・介護休業法では、子の看護休暇および介護休暇は、労使協定を締結することにより入社6か月未満の労働者を除外することができますが、そうした労働者も休暇の取得ができるよう、配慮を求めるものです。)
今回の改正は、年次有給休暇や子の看護休暇・介護休暇を取得しやすい環境を整備し、平成30年4月からスタートするキッズウィーク(地域ごとに夏休みなどの一部を他の日に移して学校休業日を分散し、親の有給休暇取得等を促す取組)への対応や、労働者が裁判員として刑事事件に参画しやすくする仕組みをつくるためのものです。
事業主の皆様には配慮、検討をお願いする努力義務となっています。
政府が掲げる「働き方改革」を進めるにあたり、今後も労務管理に係る法改正が予定されています。
同じく10月1日からは、前回の記事でお伝えした育児・介護休業法についても改正、施行されています。
労働人口が減少していく中、これまで労働市場に参加しづらかった層(子育て世代の女性や高齢者など)を含め、多くの人にとって仕事を続けやすい環境を整えていく動きはしばらく続いていくものと思われます。
事業所様で何か気になることなどありましたら、当社労士法人にもどうぞお気軽にお問い合わせください。
※以下のリンクもご覧ください。
労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)、育児・介護休業指針が改正され、平成29年10月1日から適用されています
近畿各府県の最低賃金改定額
2017年8月10日 木曜日
明日11日からは、お盆も含めてしばらく夏季休暇という方も多いのではないでしょうか。
連日の猛暑の中酷使してきた体と頭を、このあたりで少し休ませてあげたいものです。
さて、今回は前回のブログでも取り上げておりました最低賃金の改定について。
近畿各府県の最低賃金額が出ましたのでお知らせ致します。
ここから異議申出の受付、異議があった場合は異議の申出に係る答申を経て正式に決定されますが、例年ここで変更があることはあまり無いようです。
京都府では平成14年度以降最も高い引き上げ額となり、25円引き上げの856円に改定されます。
政府は今後最低賃金額を1000円まで引き上げることを目標としていますが、そこにまた1歩近づいてきました。
近畿各府県で答申されている金額と発効予定日は以下の通りです。
京都府:856円 (10月1日発効予定)
奈良県:786円 (10月1日発効予定)
兵庫県:844円 (10月1日発効予定)
大阪府:909円 (9月30日発効予定)
滋賀県:813円 (発効日未定)
最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用されます。(派遣労働者に対しては、派遣先の地域の最低賃金が適用されます。)
各地域の最低賃金を下回っていないかどうか、従業員の皆様の賃金を今一度ご確認いただければと思います。
ご確認の際には、以下の点についてもご注意ください。
●最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
実際に支払われる賃金から割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などを除いたものが対象となります。毎月の賃金からこれらを引いた後に、最低賃金額を下回っていないかご確認ください。
●月給や日給で支払われている方については、基本給(上記の各手当等を引いた金額)を時間給に換算して、最低賃金を下回っていないか確認していただくことになります。
※時間給の出し方
【月給の場合:月給÷1ヶ月の所定労働時間】
【日給の場合:日給÷1日の所定労働時間】
最低賃金法は強行法規ですので、こちらを守っていないと罰則が科せられることもございます。
事業所の給与担当者の方でも、最低賃金が改定されたことを知らないまま、または賃金額が最低賃金額を下回っていることに気が付かないまま、違法な状態を続けてしまうこともあるようです。
また、他府県に支店があるような事業所の場合は、本店所在地の金額だけではなく、支店がある地域の最低賃金にも注意が必要です。
例えば京都に本店があり、大阪に支店がある場合で、もともと時間給を900円に設定してあるので、京都の最低賃金額が856円になってもまだ大丈夫だと油断していると、大阪の支店について最低賃金909円を割ってしまっていた、というようなケースも考えられます。
こうした例に限らず、最低賃金に近いラインで給与を設定されておられる場合は、改定時には特にご注意ください。
この機会に給与の内容を改めてご確認いただき、各地域の発効日までにご準備いただければと思います。
何かご心配な点などありましたら、当法人にもお気軽にお問い合わせください。
以下の各府県労働局のページもご覧ください。
平成29年度の京都府最低賃金は、2年連続の大幅引き上げで、時間額856円に
奈良県最低賃金の改正決定にかかる答申について
大阪府最低賃金26円引き上げ 時間額909円に
滋賀地方最低賃金審議会の意見に関する公示
兵庫県最低賃金時間額の25円引上げを答申 -時間額844円に-
↓以下のリンクもご参考になさって下さい。
最低賃金の対象となる賃金
最低賃金
2017年7月27日 木曜日
すでに新聞やニュースでご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、
今年度の最低賃金引き上げの目安が発表されました。
今年度は全国平均で25円の引き上げ、時給848円と厚生労働省の審議会にて決定されました。25円の引き上げは最低賃金が時給で示されるようになった平成14年度以降最大の上げ幅となります。
今後、今回発表された目安をもとに都道府県ごとの最低賃金が決められ、10月頃より値上げ後の最低賃金が適用されます。
最低賃金は時給で示されていますが、決して時給制の労働者だけが対象になる訳ではありません。
月給制の場合も月額を月の所定労働時間で割った場合に、最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。
最低賃金に満たない給与を支給していた場合、罰則が科せられる場合もあります。
まだ今年度の引き上げ後の地域別最低賃金額は発表されていませんが、この機会に給与の内容を確認されてみてはいかがでしょうか。
また、今年度の最低賃金額が決定されましたら各都道府県の労働局のホームページ等でもご確認いただけますので、ぜひご覧ください。
アルバイトの労働条件確認キャンペーンが実施中です
2017年6月23日 金曜日
6月も後半に入り、雨の日が増えるとともに本格的な夏の気配も近づいてまいりました。
暑かったり雨だったりの快適とは言い難い季節ではありますが、学生の方であれば、これから試験を経ての楽しい夏休みの計画を考え始める頃でもあるかもしれませんね。
さて、この時期、厚生労働省による「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンが全国で実施されています。(4月1日から7月31日まで)
違法な罰金制度を学生アルバイトに課していた等の事件が社会的に問題視されたことを受けて、多くの学生がアルバイトを始める今の時期、労働基準法の決まりをリーフレットやポスターで分かりやすく広報するとともに、都道府県労働局及び労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーに「若者相談コーナー」を設置し、学生からの相談に重点的に対応するなどの取り組みを行っています。
重点事項として広報されているのは以下の点です。
① 労働契約締結の際の学生アルバイトに対する労働条件の明示
・・・アルバイトを雇う時も、雇用契約書などにより、勤務時間や休日休憩、給与、昇給などの労働条件の明示が必要です。
② 学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトの適切な設定
・・・事業所は学生アルバイトに対して、学業とアルバイトを適切な形で両立できる環境を整えるよう配慮する必要があります。学校の試験期間中などに、業務の都合で過度にシフトを入れることなどがあってはいけません。
③ 学生アルバイトの労働時間の適正な把握
・・・アルバイトについても、労働日ごとの始業、終業時刻を確認し、適正に記録する必要があります。また、残業手当の支払いも必要です。
④ 学生アルバイトへの商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
・・・アルバイトが希望していないのに商品を強制的に購入させることはできません。
アルバイト本人が希望して商品を購入した場合でも、労使協定無しに賃金から一方的に商品代金を差し引くことはできません。
⑤ 学生アルバイトの労働契約の不履行等に対して、あらかじめ罰金額を定めることや
労働基準法に違反する減給制裁の禁止
・・・遅刻や欠勤などの労働契約の不履行や不法行為に対して、あらかじめ損害賠償額を定めることはできません。就業規則に基づいて賃金の一部を減額する場合であっても、 無制限に減給することはできません。(1回の減給額は平均賃金の1日分の半額以下。複数回にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額の10分の1以下。)
現代はSNSの発達もあり、違法な労務管理の実態が瞬く間に拡散されてしまうということも起こりえます。
その結果当該の企業によっては求人が難しくなる、企業のイメージ低下につながるといった問題が生じることも考えられます。
そのようなリスクの回避のためにも、アルバイトに限らず今一度現在の労務管理の在り方をご確認いただき、雇用の際の注意点を整理していただければと思います。
何か気になられることがありましたら、どうぞ当法人にもお気軽にお問い合わせください。
以下のリーフレットもご覧ください。
「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン中です!!
「学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表」も公開されていますのでご参考になさって下さい。
学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表
義務化2年目のストレスチェック
2017年5月19日 金曜日
ゴールデンウィークが明けて早くも2週間が経とうとしていますね。
連休の影響で5月は稼働日が少なく、忙しい思いをされている方も多いのではないでしょうか。
5月といえば話題に上るのが、2つ前の記事でも触れておりました五月病。
五月病に限らず、メンタルヘルスの不調は様々な要因で誰にでも起こり得ます。
仕事内容に関することや成績、人間関係等々、職場でのストレス要因は色々と考えられます。
日々高いストレスにさらされ続けていれば、いつしか不安から鬱になり、休職や退職に至るケースもあるかもしれません。
そうしたメンタルヘルス不調によるリスクを未然に防ぐための施策として、平成27年12月より労働者が常時50人以上いる事業所でのストレスチェックが義務化されました。
毎年1回、すべての労働者※に対してこの検査を実施し、実施状況は労働基準監督署に所定の様式で報告しなければなりません。
(※ただし、契約期間が1年未満の労働者や労働時間が通常の労働者の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外)
ストレスチェックを行わなかった場合の罰則規定はありませんが、この報告を行わなかったり虚偽の報告をした場合には、50万円以下の罰金に処せらることがあります。
50人未満の事業所については今のところ努力義務となっていますが、実施して以下の要件を満たせば費用の助成を受けることができます。
① 労働保険の適用事業所であること。
② 常時使用する従業員が派遣労働者を含めて50人未満であること。
③ ストレスチェックの実施者が決まっていること。
④ 事業者が産業医資格を持った医師と契約し、ストレスチェックに係る産業医活動の全部または一部を行わせること。
⑤ ストレスチェックの実施及び面接指導を行うものは、自社の使用者、労働者以外の者であること。
助成される費用については以下の通りです。
① ストレスチェックの実施・・・1従業員につき500円
② ストレスチェックに係る産業医活動・・・1事業場あたり産業医1回の活動につき21,500円(上限3回)
※500円と21,500円はそれぞれの上限額。(実費額が下回る場合は実費額が支給されます。)
なお、昨年とは助成金について以下の点が変更されています。
①小規模事業場登録届出が無くなりました。
②実施対象期間が1年度単位となりました。
③申請期間が4月15日から翌年度6月30日までとなりました。
④助成金の対象となる産業医活動が
・ ストレスチェック実施後に面接指導を実施すること
・ 面接指導の結果について、事業主に意見陳述をすること
の2点のみとなりました。
事前に申請が必要だった小規模事業場登録届が無くなり申請期間が延びるなど、
昨年に比べて若干緩和された内容となっているかと思います。
義務化一年目となった昨年は、従業員にとってはストレスチェックは義務ではないため受検拒否をするなど、実施したものの受検率が低くなるケースもあったようです。
また、受検して「高ストレス者」と判定された労働者に対する医師の面接指導を労働者の申し出により実施することが義務付けられていますが、実際に面接指導を申し出る労働者が少ないなど、結果を対策につなげていくという点でも課題を残しました。
ストレスチェックはそれ自体が目的ではなく、労働者がメンタルヘルス不調になることを防止し、また不調にならないための職場環境づくりに役立てていくための制度です。
義務となっている事業所様はもちろんですが、50人未満の事業所様も助成金など利用し、制度を活用されてみてはいかがでしょうか。
●厚生労働省のこちらのページもご参考になさって下さい。↓
ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
●助成金に関してはこちら。↓
「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引(平成29年度)
プレミアムフライデー
2017年2月10日 金曜日
立春も過ぎ、暦の上では早くも春となりました。
暖かくなってくると、行楽に出かけたり、新しいことを始めてみたりと、フットワークも心なしか軽くなりますよね。
今月24日(金)から始まるプレミアムフライデーは、そんな気持ちを後押ししてくれる制度ですが、労務管理の点からはどのようなことに気を付ければよいか、お話しさせていただきたいと思います。
月末の金曜日は、15時で仕事を切り上げましょうという プレミアムフライデー。
この制度を導入したい場合、例えば所定労働時間が9時~18時とすると、15時~18時の3時間のお給料はどうしたらいいのかな・・・と思われましたか?
これには次の3つのパターンが考えられます。
① これまで通り、全額支給する。
この金曜日については所定労働時間の変更とすることで、給料を全額支給する方法です。
② 給料から控除する。
労働基準法はノーワークノーペイを原則としているため、この3時間について、賃金を支払わない方法もあります。
③ 他の日の労働時間を3時間分増やす。
これは、変形労働時間制を採用している事業場に認められる方法です。
この金曜日の労働時間を減らす代わりに、他の日の労働時間を増やすことで、所定労働時間も給料も変更せずに導入することができます。
※就業規則の変更や、労使協定が必要なケースもありますので、導入をお考えの方はご相談ください。
経団連は、今年度が「働き方・休み方改革集中取組み年」であることから、「柔軟な働き方の推進」を呼びかけているそうですが、労務管理側の苦労はあまり考慮されていないかもしれませんね。
そしてプレミアムフライデーには、飲食店などのサービス業が早くから開店することで、時間外労働が増える可能性もあります。
割増賃金の支払はもちろんですが、サービス業に従事する方々の働き方が近年特に問題になっている流れの中で、事業主の皆様はより一層、従業員の労働時間や健康管理に注意していく必要があるといえます。
最後までお読みいただき ありがとうございました。
36協定とは、、、
2017年1月18日 水曜日
こんにちは。この度はひかり社会保険労務士法人のブログを御覧いただき誠にありがとうございます。
今回は、「36協定」について取り上げたいと思います。
時間外労働に関するニュースは昨年から頻繁に目にするようになり、長時間労働の是正を課題とされている事業所様も多いのではないでしょうか。そのニュースの中でも、この「36協定」は頻繁に登場します。
● 36協定とは ●
まず、大前提として従業員に時間外労働・休日労働を行わせる場合、「36協定」と呼ばれる労使協定を事業所ごとに締結する必要があります。これは使用者と当該事業所に「労働者の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者」との書面による協定です。
その内容は、
①時間外労働を必要とする具体的事由
②その業務の種類
③労働者の数
④1日及び1日を超える期間(1日を超え3か月までの期間及び1年)についての
延長することのできる時期
⑤労使協定の有効期限(労働協約による場合を除く)
について協定を結ぶ必要があります。
また、36協定は労働基準監督署に届け出ることによって効力が発生するため注意が必要です。
36協定で定める事ができる時間外労働の上限は「1か月 45時間」「1年 360時間」など定められていますが、特別条項付きの協定を結ぶと、その上限を超えた時間を定める事ができるため、抑止力としての機能を果たしていないのが現状です。
●「違法残業」●
36協定を締結し、届出を行っていた場合でも、労使協定で定める範囲を超えて時間外労働をさせた場合は「労働基準法32条違反」となります。
今月、神奈川労働局により三菱電機が書類送検されたケースがその事例にあたり、36協定で定める上限を超えて社員に時間外労働をさせた疑いがあるという事でした。
● 就業規則等における定め ●
使用者は労働者に時間外・休日労働をさせるにあたり、36協定の締結に加えて就業規則等に、時間外労働命令に従うことについて契約上の義務を定めておかなければなりません。
日立製作所武蔵工場事件の判例においては、
「36協定の締結・届出が行われ、就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば、労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨を定めているときは、当該就業規則の規定が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容となるから、当該就業規則の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働義務を負う」とされています。
● 最後に ●
新聞やニュースでは毎日のように「長時間労働による労災認定」「違法残業による立件」について取り上げられています。
この機会に労務管理の課題・問題点や36協定の内容など一度見直されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。