’パタハラ’とは…
2017年2月24日 金曜日
こんにちは。今日からいよいよ“プレミアムフライデー”がスタートします。
市内のデパートでは、仕事帰りに立ち寄ってもらおうと、プレミアムフライデー向けのレストランの特別メニューや、家族へのお土産に最適なスイーツの販売など、プレミアム商戦も始まりました。
さて、今日は平成29年1月に改正された、「男女雇用機会均等法」と「育児・介護休業法」の中からご紹介させていただきます。
みなさんは、“パタハラ”という言葉をご存じでしょうか?
聞き慣れない言葉なので、おそらく大半の方が?という感じではないでしょうか。
“パタハラ”とは、パタニティ・ハラスメントの略で、英語で「父性」を意味するPaternityと、嫌がらせを意味するハラスメントを合わせて作られた造語です。
例えば、男性社員が育児休業や時短勤務を申し出た場合に、上司が配置転換や昇進させない等、人事考課に影響があることを示唆し、制度の利用を抑制する場合が“パタハラ”に該当します。
あるいは、上司や同僚が、「男が育児休業を取得するなんて…」といった発言をすることも、“パタハラ”に当たります。
これまで、事業主の“マタハラ”行為は法律で禁止されていましたが、平成29年1月より、上司や同僚を含めたマタハラ・パタハラ行為の防止措置が、事業主に義務付けされました。
なお、この防止措置は、業種・規模に関わりなく、全ての事業主に義務付けされています。
また、マタハラ・パタハラ防止措置は、正社員だけでなく、パートタイマー、契約社員等も含めた、男女すべての従業員が対象になります。
今回の改正で、事業主は、以下のような内容の防止措置を講じなければならない、と規定されました。
では、それぞれのポイントについて、具体的に見ていきたいと思います。
1.ハラスメントの内容、方針等の明確化とその周知・啓発
パタハラ・マタハラの内容について、社内報等で周知する他、管理職を含めた全従業員を対象とした、マタハラ・パタハラ 防止のための研修等の実施。また、マタハラ・パタハラ行為に関する対処について、就業規則等に規定する。
2.相談窓口の設置
マタハラ・パタハラに関する相談や、苦情に関する担当者の選任と、相談窓口についての周知。また、相談者が利用しやすいよう面談の他、メールや電話でも受け付ける等の工夫をする。
3.マタハラ・パタハラに関する迅速かつ適切な対応
マタハラ・パタハラが起こった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適切に対応する。また、相談担当者への研修の実施や、相談マニュアルを作成する。
4.マタハラ・パタハラの原因や背景となる要因の解消
マタハラ・パタハラの起こる原因と、その背景となっている要因の解消のため、業務分担の見直しや、業務の効率化を図る。
5.プライバシーの保護
相談者・ハラスメントの行為者等のプライバシーを保護するとともに、相談者や事実確認に協力した人に対して、不利益な取扱いをしてはならないことを就業規則等に規定する。
以下、ご参考までに、社内での研修等に利用できるパンフレットをご案内します。
1.三重県の労働局が作成した冊子・リーフレット・トリセツ
http://www.pref.mie.lg.jp/common/01/ci500006206.htm
2.厚生労働省が作成したパンフレット
「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシャルハラスメント対策は事業主の義務です!!」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/
長時間労働と労災認定
2017年2月17日 金曜日
こんにちは。この度はひかり社会保険労務士法人のブログを御覧いただき誠にありがとうございます。
時間外労働に関わる事件やニュースが増える中、「労災認定」という言葉をよく耳にされるかと思います。「労災認定」と聞くと業務中のケガなどをイメージしますが、長時間にわたる時間外労働などを要因として発症する恐れのある「脳・心臓疾患」「精神疾患」についても「労災認定」の基準が設けられています。
今回は「労災認定」に係る時間外労働時間数の基準についてお伝えしたいと思います。
● 「脳・心臓疾患」と「精神疾患」 ●
長時間労働を起因とする労災認定の対象疾患は大きく「脳・心臓疾患」と「精神疾患」に分けられます。それぞれにおいて、時間外労働の時間数に応じた基準が設けられており、その基準を超えると「業務」と「発症」との関連性が強いと判断される可能性が高まります。
● 脳・心臓疾患 ●
脳・心臓疾患とは、脳内出血やくも膜下出血等の「脳血管疾患」、心筋梗塞等の「虚血性心疾患」の事を指します。「業務による明らかな過重負荷」を受けたことにより発症したと認められれば「労災認定」となります。
その判断基準には以下の3つがあります。
①異常な出来事:発症直前から前日までの間において、発症状態を時間的および場所的に
明確にし得る「異常な出来事」に遭遇したこと
②短期間の過重業務:発症前おおむね1週間に日常業務に比較して特に過重な身体的、
精神的負荷を生じさせる業務に従事したこと
③長時間の過重業務:発症前おおむね6か月間に著しい疲労の蓄積をもたらす
特に過重な業務に従事したこと
その中で、長時間に上る労働は疲労の蓄積をもたらす要因と考えられるため、時間外労働が下記の基準を超えると業務と発症との関連性が強いと判断される可能性が高まります。
<発症前1か月間におおむね100時間を超える もしくは 発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働>
平成28年6月に厚生労働省が発表した平成27年度「過労死等の労災補償状況」
の資料に「脳・心臓疾患の時間外労働時間数別支給決定件数」が掲載されています。
下の表を御覧頂くと、時間数が80時間を超えるのに伴って、件数も急激に増加している事が分かります。上記の基準を超えると労災認定される可能性が高まるという事を実感して頂けると思います。
● 精神疾患 ●
精神疾患とは、うつ病や統合失調症等の疾病や精神障害を指します。
下記3つの認定要件を満たす場合は「労災認定」となります。
① 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
② 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、
業務による強い心理的負荷が認められること
③ 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
そして、②の基準に記載されている「業務による強い心理的負荷」を判断する基準として、下記の時間外労働時間数が定められています。
○ 発病前1か月におおむね160時間以上
○ 発病前3週間におおむね120時間以上
○ 発病前の2か月連続して1月あたりおおむね120時間以上
○ 発病前の3か月連続して1月あたりおおむね100時間以上
上記の基準を超えると「心理的負荷を強」と判断される可能性が高まります。
三菱電機の元社員の男性が長時間労働による精神疾患を発症し、昨年11月に労災認定されたケースでは、「発症の3カ月前から月100時間を超える残業」があったと認定された上で、「強い心理的負担がかかっていた」と判断されています。
● 最後に ●
今回は「業務」と「発症」の関連性が強いと判断される場合の「労災認定」に係る時間外労働時間数の基準についてお伝え致しました。実際の事例においては、今回ご紹介した時間数より少ない場合でも労災認定が行われる場合もあります。
「〇時間を超える残業、、、」というテレビや新聞での報道も、こういった行政の基準を知った上で御覧頂くと印象が変わるかもしれません。
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
プレミアムフライデー
2017年2月10日 金曜日
立春も過ぎ、暦の上では早くも春となりました。
暖かくなってくると、行楽に出かけたり、新しいことを始めてみたりと、フットワークも心なしか軽くなりますよね。
今月24日(金)から始まるプレミアムフライデーは、そんな気持ちを後押ししてくれる制度ですが、労務管理の点からはどのようなことに気を付ければよいか、お話しさせていただきたいと思います。
月末の金曜日は、15時で仕事を切り上げましょうという プレミアムフライデー。
この制度を導入したい場合、例えば所定労働時間が9時~18時とすると、15時~18時の3時間のお給料はどうしたらいいのかな・・・と思われましたか?
これには次の3つのパターンが考えられます。
① これまで通り、全額支給する。
この金曜日については所定労働時間の変更とすることで、給料を全額支給する方法です。
② 給料から控除する。
労働基準法はノーワークノーペイを原則としているため、この3時間について、賃金を支払わない方法もあります。
③ 他の日の労働時間を3時間分増やす。
これは、変形労働時間制を採用している事業場に認められる方法です。
この金曜日の労働時間を減らす代わりに、他の日の労働時間を増やすことで、所定労働時間も給料も変更せずに導入することができます。
※就業規則の変更や、労使協定が必要なケースもありますので、導入をお考えの方はご相談ください。
経団連は、今年度が「働き方・休み方改革集中取組み年」であることから、「柔軟な働き方の推進」を呼びかけているそうですが、労務管理側の苦労はあまり考慮されていないかもしれませんね。
そしてプレミアムフライデーには、飲食店などのサービス業が早くから開店することで、時間外労働が増える可能性もあります。
割増賃金の支払はもちろんですが、サービス業に従事する方々の働き方が近年特に問題になっている流れの中で、事業主の皆様はより一層、従業員の労働時間や健康管理に注意していく必要があるといえます。
最後までお読みいただき ありがとうございました。
同月内に入社、退社した従業員の社会保険料の控除について
2017年2月3日 金曜日
ひかり社会保険労務士法人のブログをご覧いただきましてありがとうございます。
まだまだ寒い日が続いておりますが、今後春にかけては従業員の入退社が増えていく時期でもありますね。
様々な事情で、入社したもののすぐに辞めてしまう方もおられると思います。
中には、入社したその月に退社してしまったという場合もあるかもしれません。
そういった時に、お給料からの社会保険料の控除をどうしたら良いか?というお問い合わせをいただくことがございます。
結論から申しますと、同月内に資格の取得と喪失があった場合の社会保険料の控除については以下のようになります。
・厚生年金保険料 → お給料から控除しない場合もある
・健康保険料 → お給料から控除する
・介護保険料 → お給料から控除する
厚生年金保険料を「控除しない場合もある」としているのは、あとで控除した分が還ってくるケースがあるからです。還ってくるケースとは以下の二つです。
1. 同月得喪した月内に転職先の他社で社会保険に加入
2.同月得喪した月内に退職者本人が手続きして国民年金に加入
同じ月に社会保険の資格取得と喪失を行うことを同月得喪と呼びます。
平成27年10月1日より、同月内に退職者本人が国民年金加入の手続きをした場合にも厚生年金保険料の還付がされるようになりました。
社会保険の被保険者期間は月単位で計算されますので、同月得喪した退職者に関しては、期間が1カ月に満たなくてもひと月分の厚生年金保険料を納付します。
ただし、同月内に国民年金に、もしくは他社で厚生年金に加入した場合は、その月は国民年金の、新しい会社での被保険者となるので、元の会社で徴収された厚生年金保険料に関しては還付されるのです。
以前も、退職者が同月得喪した月内にさらに転職先の会社で社会保険に加入した場合には還付されていました。
ですが、自動的に年金事務所から通知があるわけではなく、申し出によって事実確認後に手続きをし還付されるという仕組みだったため、事業所は退職者が新しい厚生年金に加入したことを知ることなく、保険料は徴収されたままとなることも考えられました。
この場合でも、同月得喪月に関して年金受給額に反映されるのは、新しい事業所の分のみとなります。
そのため、平成27年10月以降は、厚生年金・国民年金共に、加入の手続きがなされた段階で年金事務所から元の事業所へ自動的に郵送にて通知されるようになりました。
ここで注意しなければならないのは、1,2ともに、手続きがなされていなければ還付はされないということです。
他社で社会保険に加入する場合は転職先の担当者が手続きをするでしょうが、国民年金に加入する場合、万が一退職した本人が手続きを行わなければ、同月得喪月の保険料は徴収されたままです。
他社での社会保険加入にしても本人での国民年金加入にしても、手続きがあって初めて年金事務所からその旨の通知が届き、その通知に従って申請を行うことにより、いったん徴収された保険料が還付されるのです。
なお、健康保険・介護保険については、年金のように将来受け取る額に影響するものではないため、このような規定はありませんので、お給料から控除することになります。
同月得喪でも厚生年金と健康保険で取り扱いが異なるなど複雑な面もありますが、以上がご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。